迷宮キングダム レビュー

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迷宮キングダムは、これまで遊んできたTRPGの中でも1・2を争う出来かもしれない。敷居の低さと奥の深さ、ランダムに生成されるキャラクターの個性を解釈する楽しさ、シナリオ作成とセッション運営の簡単さ、TRPGとボードゲーム的な要素の融合、そしてユニークな世界観が絶妙に組み合わせられている。全てが迷宮の中という独特の世界観の為、全くTRPG経験が無いグループには難しいかもしれないが、TRPGを1度でも経験したことがある人には是非ともお勧めしたい。

迷宮キングダムは、簡単にプレイしようと思えば驚くほど簡単にプレイできる。キャラクターの名前も、背景も、ジョブですらランダムに決められる。することといえば、クラスとクラススキルを選ぶだけ。選択の多さは魅力だが、逆に入りにくさともなる。そのあたりが上手く解決されている。

勿論、ランダムでめちゃくちゃな能力のキャラクターができたり、理解が難しい個性のキャラクターができては意味が無いのだが、迷宮キングダムでは、少なくとも最初のレベルでは、クラスによる能力値の影響が多くなっており、ゲーム的に破綻は無い。また、個性付けの為の表が非常に良くできており、ランダムに作られたキャラクターを解釈していくのはとても面白い。普通に作ってもなかなか面白いキャラクターを作るのは難しいのだが、複数の要素の組合せを解釈していくという過程は、それを数段容易なものにしてくれるようだ。

しかし、全ての要素を考えてキャラクターの育成を考え出すと、途端に奥の深さが顔を覗かせる。クラス・ジョブ・ボーナス・スキルの組合せによって、かなりのバリエーションを持ったキャラクターを作ることができる。前衛、回復、支援といった戦闘での役割だけではなく、探索や国の経営に役立てる為のアプローチの仕方が沢山あり、キャラクターの育成を考えるだけで相当楽しめる。感情値、素材とアイテム合成、国の運営などのシステムは一見簡単だが全て有機的につながっており、全く無駄が無い美しいバランスを保っている。

シナリオの作成とセッション運営の容易さも特筆に価する。GM向けにちょうど良いバランスを保てる目安が数字できっちりと用意されていて、しかもそれが上手く機能することはとても素晴らしい。オープンダイスで、ルールの範囲で全力でプレイヤーと勝負しても、いい感じで戦闘をまとめることができるだろう。また、全てが迷宮の中という設定から冒険のマップは全て3X3で表現されていること、シナリオの流れや各ステップの処理がきっちり決まっていることで、GMはきっちりとテンポを保ちながらシナリオを進めることができる。

TRPGだけでも良くできてはいるが、国の経営がそれに絡んでいることがこのゲームの独自性だ。普通のシステムではパーティが共通の目標をどう持つかというのが課題の一つだが、国の成長はプレイヤー共通のメリットであり関心事となる為、自然と皆で力を合わせる空気と、チーム意識が生まれてくるところが良い雰囲気を出してくれる。≪民の声≫などを通じて、各プレイが国の状態に直接つながってくるところも面白い。

そして、これらのゲーム的要素を上手く統合しているのが、全てが迷宮に覆われてしまったという、非常にユニークな世界観だ。迷宮の中で少しでも住みやすいところに集まった人たちが作る小王国を率いるというPCたちの立場、迷宮で名を馳せる個性的な4つの強国、生活をささえる「星」の概念など、雑多なようだが統一感のある構成になっている。GMがPC達の王国の様子、迷宮の様子など細かく描写していくと、興味深い世界観を深く味わうことができるだろう。

唯一気になるのは、基本ルールではある程度以上まで王国を成長させていくことが難しいこと。最近のシステムでは、レベルアップごとの能力の伸びを小さくする代わりに毎回レベルアップすることで達成感を出しているものが多いだけに、プレイ回数が重なると若干この点で物足りなさを感じるかもしれない。勿論王国に施設を足したり領土を買い足したりすることで成長ができるが、やはり自分のキャラクターの成長も楽しみたいもの。サプリメントの猟奇戦役で若干改善されているが、レベルがある程度の間隔で向上していくようなきれいなロードマップはルール側では用意できていない。このあたりはバランスを見つつGMが考えていく必要がありそうだ。

プレイヤー用の王国ブック、GM用の迷宮ブック両方を買っても最近の大型本RPGよりは若干お買い得。入手のしにくさが難点だが、イエサブの通販を活用してでもトライしてみる価値はある。

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